なぜ朝起きられない。もしかして病気かも?

朝目覚めたときに布団の中からでるのはとても辛いですよね。そもそも朝起きるのが辛いのは多くの人が経験することであって、もっとたくさん寝ていたいと思うのは人間の本能だと言われています。しかし抗いがたいほどの寝起きの悪さや、日常生活に支障が出るほどの眠気を感じるのであれば、それはもしかすると自分の意志だけでは解決できない問題かもしれません。実は「朝起きられない」という症状が出る病気があります。意志が弱さや怠けのせいだと責めてしまう前に、一度しっかりと向き合ってみましょう。

◎その目覚めの悪さは、もしかすると治療の対象かも?

「体内時計」という言葉を耳にしたことは一度はありませんか?体内時計とは1日のリズムを司っている体の中の時計です。時計はないのに一定の時間になるとお腹が減る、また眠くなるなどは、疲労や生活習慣の他にこの体内時計がすごく関わっています。

この体内時計のことを「概日リズム」といいますが、この概日リズムは光や温度など外からの刺激によって左右されます。このリズムにより人間は、夜になったら寝て朝になったら起きることができるのです。概日リズムは光を浴びることによりズレが起こっていてもリセットされます。つまり朝日を浴びるということは、一日のスタートとして非常に重要ということですね。

◎概日リズム睡眠障害について

概日リズム睡眠障害とは、昼夜のサイクルが体内時計と合わないために、必要な時間に眠ることができない障害のことを言います。

この睡眠障害には様々なパターンがあります。そのパターンによって原因は様々見つかっています。今回は、朝目覚めにくい人に考えられる「睡眠相後退症候群」「非24時間睡眠覚醒症候群」「交代勤務による睡眠障害」について解説します。

「睡眠相後退症候群」は、慢性的に夜眠りにつく時間が遅くなり、朝起きられなくなる睡眠障害です。これは長休暇の後になりやすいため、夏休みなどがある学生さんに多く見られます。床についても明け方まで寝付くことができず、やっと眠れたと思っても目覚めが悪い、朝起きられないといった症状が出てきます。もちろん大人でも、長休暇後になる可能性があります。

以上の理由から思春期に発症しやすいと言われていますが、その場合は生活リズムの乱れなどの後天的な要因が関わってきます。しかし、もし幼少期にこの障害が起きた場合は先天的な「時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子が原因の場合があります。先天的であれば症状を軽減するための対症療法、後天的であれば治療を行うことが可能です。治療の際には、光療法と呼ばれる、強い光を浴びることで体内時計を調整する治療が行われます。

次に、「非24時間睡眠覚醒症候群」について解説します。人は一定の就寝時間で寝るのが体にとって理想的だと言われていますが、体内時計のズレを治すことができずに、1~2時間ずつ寝る時間がずれていってしまう睡眠障害です。何も対処しなければ自分の意志で時間を元に戻すことができない為、日常生活に支障が起こります。

原因は朝の光によって体内時計がリセットされないことがと言われていますが、一方で若年層の長期休暇による昼夜逆転生活によって起きることもあります。こちらの治療の際にも光療法が用いられます。

最後は「交代勤務による睡眠障害」です。昨今は24時間営業も当たり前になってきました。特に人命を預かる消防や病院などは休むことができないこともありますし、そもそも勤務の開始時間が日によって異なるということもあります。その交代勤務が睡眠に悪影響を及ぼしてしまいます。

起きているべき勤務時間が常に変わってしまうことで、勤務スケジュールと体内時計が合わなくなってしまうのが、障害に陥る要因と言われています。夜に眠ることができなくなることや逆に日中に寝てしまうなどの身体的症状や作業効率の低下や倦怠感を感じるなどの様々な精神的な症状を感じたら要注意です。

夜間勤務では夜中に起きて朝に寝なければなりません。しかし本来は人間は朝起きるもの。周囲の明るさなどに体内時計が同調してしまい眠りが浅くなったり睡眠を中断されてしまうこともあります。逆に早朝勤務のために早めに眠りにつかなければならない場合は、まだ体が休む態勢になっていないため、なかなか寝付けない、眠りが浅いなどの症状が出てしまいます。こちらも光療法による治療が行われます。

概日リズム障害の特徴としては「普通に眠れていること」「睡眠時間が普通であること」などが挙げられます。日常で予防するためには、カフェインなどの刺激物を避けたり、睡眠以外でベッドを使わないようにしたりすると効果的です。また必要な時間に起きられないため「睡眠障害」と呼ばれていますが、昼夜逆転の生活でも生活に支障がない場合は、通常のリズムを守っていると判断されます。

◎子供がなりやすい睡眠の病気は?

思春期の間は体だけではなく体内の変化も著しく、低血圧や貧血など様々な不調が現れやすくなります。そのため朝起きられないことを「根性がない」や「生活の乱れ」など気持ちの問題として扱うことは非常に危険です。

特に10歳から16歳の学生に多いのが、起立性調節障害と呼ばれる障害です。自律神経がコントロールできていないため、起立や座位の状態では脳の血流が滞ってしまい、思考力や判断力の低下、睡眠障害、貧血での立ちくらみやめまいなどが起きます。午前中に強い不調が起こることが多く、朝に目は覚めているのに起きようと思っても体を起こすことができなかったり、体がだるくて動かなかったりします。原因は体の成長に自律神経が追いついていないことだと入れていますが、はっきりとしたものは現在のところまだわかっていません。

起立性調節障害の治療には、大きく分けて本人や親への指導を行う「非薬物療法」と、血液量を増加させる薬などを処方する「薬物療法」の2つがあります。併用されることもありますが、病院によって治療の方向は異なるので、自分に合った病院を探すことが大切です。

非薬物療法の治療は、運動の習慣や普段から気をつけたい生活に関する注意など、内容が多岐に渡ります。しかしもっとも治療に必要なのは「周りの理解」だと言われています。見た目ではわからない病気のため保護者や学校では怠けや仮病を疑われることもあります。体調がおかしいと感じたらすぐに医療機関で診察をしてもらって下さい。起床時に貧血になりやすいと言われている午前中に検査してもらうことがお勧めです。

この障害は小学生や中学生に起きやすいと申し上げましたが、実は大人でも発症する可能性があります。とくに子供の頃に発症していた場合、なんらかの症状が大人になっても残ることが多いと言われていますが、全く幼少期に症状がなくても、30代以降に突然発症することもあります。

症状はほとんど同じですが、大人の起立性調節障害は仕事のストレスが大きな原因となります。自律神経はストレスを感じると非常に乱れやすくなる為、残業や仕事のストレスで発症したり、治まったはずの症状が再発したりする例が珍しくありません。もしご自身が立ちくらみやめまいなどに襲われることが多いようであれば一度病院での診療をおすすめします。

◎最後に

「朝が弱い」と言うと以前は「体質だからしかたない」と諦められていたり、「怠けている」と怒られたりしていましたが、昨今では病気として治療の対象になってきました。病気と言われるとショックに感じるかもしれませんが、医療機関が力添えをしてくれるということ。まさかこれは…?とご自身で気になることがあれば、ぜひ医療機関に相談してみてください。

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